カーライフを楽しむ多くの人が悩む問題の1つに「イオンデポジット」があります。見た目が悪く、通常の汚れと違って洗車だけではなかなか落とせません。さらに、状態が悪化すると表面に凹凸が生じてしまいます。
ガラスコーティングはイオンデポジットを防ぐ有効な手段の1つですが、完全に防ぐのは難しいとされています。コーティング施工後にイオンデポジットが発生し、除去剤を使いたいが「被膜まで剥がれるのではないか」と、悩む方も少なくありません。
今回は、イオンデポジットが発生する主な原因や、効果的な除去方法について解説します。また、発生を防ぐ対策方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ボディ表面にできるイオンデポジットとは?
イオンデポジットとは、車のボディ表面にできる白い跡や斑点のことで、主に水滴が蒸発した後に残るミネラル成分が原因とされています。雨水や水道水にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれており、これらが水分とともにボディ表面に付着し、乾燥とともに固着します。
軽度であれば除去可能ですが、放置すると塗装表面が浸食され、凹凸が発生することがあります。この状態まで悪化すると、一般的な洗車では落とせず、専用の除去剤や研磨作業が必要です。
ガラスコーティングを施すことで、汚れの固着は防ぎやすくなりますが、雨に濡れるたびに拭き上げるのは現実的に難しいため、青空駐車の場合などではイオンデポジットができやすくなります。
ウォータースポットや水垢との違い
イオンデポジット、ウォータースポット、水垢はどれも車のボディ表面に残る跡ですが、原因や特徴が異なります。
ウォータースポット | 水滴が蒸発した際に残るミネラル成分が発生する白い跡で、イオンデポジットと明確な違いはない。一般的にウォータースポットは軽度な状態を指し、状態の悪化したものをイオンデポジットと呼ぶ。 |
水垢 | 雨水とボディに付着した汚れが混ざり合い、乾燥後に固着して残るもので、排気ガスや油性の汚れなどが原因。イオンデポジットと比べると黒ずんで見えることがあり、専用のクリーナーで除去できる。 |
これらをまとめてシミと呼ぶこともありますが、いずれも放置すると愛車の見た目が悪くなるため、早めの対策が必要です。
イオンデポジットができてしまう主な原因
イオンデポジットは、主に水分に含まれるミネラル成分が原因とされており、具体的には以下のようなものがあります。
カルシウム | 水道水や雨水に含まれており、乾燥後に白い跡ができやすい |
マグネシウム | カルシウムと同様に白い跡が残りやすく、固着すると除去が難しい |
鉄分(鉄粉) | 工場地帯や交通量の多い場所で舞い上がりやすく、ボディに刺さるとそのまま錆びることもある |
ナトリウム | 海岸地域で付着しやすく、塩害被害の原因でもある |
これらの成分がボディに残り、雨水と合わさって乾燥後に固着すると、放置されることで塗装表面に浸透していきます。
イオンデポジットを除去する前に知っておきべき除去剤のリスク
イオンデポジット除去剤は、ボディ上面に固着したミネラル成分を溶かし、跡を目立たなくできます。除去剤には主成分として、酸性成分が含まれており、固着したカルシウムやマグネシウムを科学的に分解する仕組みです。
適切に使用することで、イオンデポジットを除去できますが、使用する際には、以下のリスクについて理解しておく必要があります。
・塗装の劣化:強い酸性成分は塗装表面を劣化させやすく、そのままの状態で放置すると劣化や色褪せを引き起こす可能性がある。
・コーティングの剥がれ:酸性成分は塗装だけでなく、コーティング被膜にもダメージを与えるため、被膜が剥がれてしまう可能性がある。
・塗装以外の箇所への影響:バイザーやゴム部分にかかると、長時間放置されることで変色や効果を引き起こす可能性がある。
使用してすぐにこのような状態になるわけではありませんが、成分が強い分、リスクがあることを覚えておきましょう。
【コーティング未施工車編】イオンデポジットを除去する方法
コーティング未施工車のイオンデポジットを除去する場合、以下の手順で作業を進めていきます。
1:中性洗剤で洗車する
2:範囲を決めて除去剤を塗布する
3:除去できたら水で洗い流す
まずは洗車で表面の汚れをしっかりと洗い流します。ボディがキレイになった後は、水に濡れた状態でパネルごとに除去剤を塗布していきましょう。濡らしたクロスで塗り広げ、製品に記載されている時間でそのまま放置します。
その後、クロスで軽く拭くことで摩擦が生じ、イオンデポジットが除去しやすくなります。最後にしっかりと水で洗い流し、拭き上げて仕上げましょう。
【コーティング施工車編】イオンデポジットを除去する方法
コーティング施工車の場合、除去剤の使用がコーティング保証の規約で禁止されている可能性があります。まずは施工店へ相談しましょう。
除去剤の中には研磨剤が含まれ、摩擦で除去するタイプもあり、コーティング被膜まで剥がれてしまう恐れがあります。コーティング施工車には専用の除去剤か、汚れ全般に効果的なクリーナーの使用をおすすめします。
作業手順は「未施工車編」と基本的に変わりません。ボディが濡れた状態で優しく塗布し、最後にしっかり洗い流します。当店では、コーティング施工車用の除去剤や、汚れ全般に効果的なメンテナンスクリーナーも販売していますので、ぜひお試しください。
・コーティング施工車用イオンデポジット除去剤の詳細はこちら
・ガラスコーティング施工車専用メンテナンスクリーナーの詳細はこちら
イオンデポジット除去作業の注意点
イオンデポジット除去作業でよくある失敗として、「放置時間を守らなかったことによる変色」や「洗い残しによる変色」があります。
除去剤は酸性成分がイオンデポジットと反応することで汚れを落とします。初めは注意していても、慣れてくると放置時間を守らず長時間そのままにしてしまい、メッキ部分などが変色することがあります。
また、除去剤には粘度の高いものが多く、軽く水をかけた程度では流れ落ちません。隙間などに成分が残ったままだと変色につながることもあるため、作業には十分な注意が必要です。
イオンデポジット除去剤を選ぶ際の注意点
イオンデポジット除去剤にはさまざまな種類があり、含まれる成分などが異なります。商品を選ぶ際には、以下の内容に注意しましょう。
酸性・アルカリ性の確認 | ミネラル成分が主な原因のイオンデポジットは酸性成分が効果的。油性汚れなどが原因のシミはアルカリ性が効果的。 |
研磨剤の有無 | 研磨剤入りの除去剤は物理的にイオンデポジットを除去する。コーティング施工車の場合、被膜も一緒に剥がれてしまう可能性が高い。 |
コーティング施工車対応 | コーティング施工車対応のものとそうでないものがあるため注意が必要。 |
先ほど解説した通り、除去剤の使用自体をコーティング保証規約で禁止している可能性もあるため、事前に確認するようにしましょう。
ボディに凹凸がある場合はお店に任せるのがおすすめ
イオンデポジットが塗装表面を侵食し、凹凸ができてしまった場合、除去剤ではほとんど効果がありません。凹凸がある状態で除去剤を使用しても改善しない場合は、専門店に相談することをおすすめします。
また、シミの原因が花粉の場合、熱湯をかけることで改善する可能性があります。それでも良くならない場合は、ポリッシャー(研磨機)で表面を磨く方法が効果的です。
研磨作業で必ずすべての凹凸がなくなるとは限りませんが、除去剤を使用するよりも高い効果があります。基本的に磨きのメニューはないものの、相談すれば対応してくれるお店もあります。
イオンデポジットを防げる対処方法
ここまでイオンデポジットができた場合の対処法について解説してきましたが、予防できるに越したことはありません。イオンデポジットを防ぐ主な方法は以下の通りです。
・コーティングを施工する
・こまめに洗車する
・ボディカバーを使用する
・炎天下に洗車しない
これらの対策、すべてを行う必要はありませんが、できそうなものから実践していきましょう。
コーティングを施工する
ガラスコーティングを施工すると、表面に形成された被膜が汚れの固着を防ぎます。また、撥水性能により雨水で汚れを流しやすくなり、未施工車と比べてイオンデポジットの発生を抑えられる効果もあります。
さらに、強めに水をかけるだけで簡単な汚れは洗い流せるため、お手入れの負担も軽減可能です。シミ全般の発生を防ぎたい場合は、細かい水玉ができにくい親水タイプや疎水タイプのコーティングがおすすめです。
駐車環境やお手入れ頻度などについて、お店のスタッフに相談し、最適なコーティングを選んでみましょう。また、コーティングを施工すれば、定期的にシミ除去のメンテナンスを依頼することも可能です。
こまめに洗車する
最も効果的なのは、こまめな洗車です。イオンデポジットは、軽度なものであれば洗車で軽くこするだけで除去できるため、定期的な洗車を心がければ、凹凸が生じるようなシミを防ぐことができます。
ボディが汚れていない状態なら、雨に濡れても目立つシミはできにくいため、雨の前後に洗車するのがおすすめです。定期的にクリーナーも使用して、イオンデポジットの発生を予防しましょう。
コーティングを施工していれば、さらに効果を高めることができます。
ボディカバーを使用する
ボディカバーを使用することで、雨水やホコリがボディ表面に直接付着するのを防ぎ、イオンデポジットの発生リスクを軽減できます。青空駐車場で、頻繁に車を使用しない人に最適な対処法です。
ボディーカバーは、紫外線や酸性雨からもボディを保護するため、塗装やコーティングの劣化を防ぐ役割も果たします。ボディカバーを使用する際は、カバーとボディの間に砂や汚れが挟まらないよう注意し、風で擦れるのを防ぐためにしっかりと固定することも大切です。
カバーのかけ外しの際も、無理に引っ張らず、ボディの上でカバーを引きずらないようにしましょう。
炎天下に洗車しない
イオンデポジットは、ミネラル成分を含んだ水滴が乾燥し、成分が固着することで発生します。炎天下での洗車は、数分で水滴が乾燥してしまうため、おすすめできません。
特に黒色などの濃色車は、表面温度が上がりやすいため注意が必要です。どうしても炎天下でしか洗車できない場合は、ボディをしっかりと水で冷やしてから、太陽光が当たりやすいルーフやボンネットを優先し、なるべく早く水分を拭き取りましょう。
大判タオルを使うと、一度に大量の水分を拭き取れるため便利です。
参考記事:イオンデポジットとウォータースポットの原因と5つの対策を解説|カービューティーIIC
イオンデポジットに関するよくある質問
最後はイオンデポジットに関する、4つのよくある質問について答えていきます。
・最強のイオンデポジット除去剤はある?
・コーティング施工車に除去剤は使用できる?
・お湯をかければイオンデポジットを除去できるって本当?
・イオンデポジットができにくいコーティングは?
おすすめの除去剤や、イオンデポジットの除去方法に関する内容ですので、参考にしてみてください。
最強のイオンデポジット除去剤はある?
すべての商品を比較できないため「最強の除去剤」は一概には決められませんが、イオンデポジットの除去には酸性成分を含んだものを選ぶと良いでしょう。さらに、研磨剤が含まれているものは除去効果が高まります。
ただし、除去効果が高い分、塗装やコーティング被膜への影響も大きくなるため、必要以上に放置したり、洗い残しがあったりしないよう注意が必要です。どうしても除去できない場合は、専門店へ相談してみましょう。
コーティング施工車に除去剤は使用できる?
コーティング施工車に酸性成分の除去剤を使用するのはリスクがあります。使用する場合は、コーティング施工車専用のものを選びましょう。
コーティング施工車用の除去剤であっても、長時間の放置は避けて、取扱説明書に記載された手順を必ず守ることが大切です。メンテナンスクリーナーには頑固な汚れを除去する効果もあるため、まずはクリーナーから試してみることをおすすめします。
・コーティング施工車用イオンデポジット除去剤の詳細はこちら
・ガラスコーティング施工車専用メンテナンスクリーナーの詳細はこちら
お湯をかければイオンデポジットを除去できるって本当?
お湯をかけても、基本的にイオンデポジットは除去できません。ただし、花粉などの有機物は熱によって分解しやすいため、60~70℃のお湯をかけることで除去できる可能性があります。
ただし、必要以上に熱いお湯をかけると、バイザーやグリルなどが熱で変形する可能性があり、火傷のリスクも伴います。そのため、基本的には専門店への依頼をおすすめします。
他にも、ドライヤーの熱を利用する方法もありますが、一点に熱風が当たり過ぎると塗装が溶ける可能性があるため、おすすめしません。
イオンデポジットができにくいコーティングは?
水玉ができにくい親水系を選ぶことで、イオンデポジットの発生を減らしやすくなります。ある程度の水弾きも欲しい場合は、滑水系がおすすめです。
ただし、これらは予防しやすいだけで、お手入れを怠るとイオンデポジットが必ずできてしまいます。こまめに洗車するなどの対策を心がけましょう。
参考記事:車のコーティング水弾きの違いは何?水の弾き方をプロが徹底解説|カービューティーIIC
正しいお手入れ方法でイオンデポジットを防ごう
イオンデポジットは、雨水や水道水に含まれるミネラル成分がボディに固着することで発生します。放置すると、他の汚れと混ざり合い塗装内部まで浸食する恐れがあるため、早めに対策することが大切です。
イオンデポジット除去剤や専用クリーナーを使用して除去しましょう。除去剤には酸性成分が含まれており、シミ全般を取り除ける一方で、コーティング被膜や塗装にも影響を及ぼす可能性があります。
除去剤を長時間そのまま放置したり、洗い流しが不十分にならないよう注意が必要です。有効な対策としては、コーティングの施工とこまめな洗車がおすすめです。
また、専門店であれば定期的なメンテナンスも依頼できるため、施工を検討してみましょう。
著者情報
株式会社カービューティーアイアイシー
代表取締役社長 舊役 哲史
2008年にガラスコーティング専門店の株式会社カービューテイーアイアイシーに入社
現在まで2,000台以上のカーコーティング,ガラスコーティングの施工実績を持ち、特に輸入車などの施工実績が豊富である。カーコーティングのオプション作業としてホイールコーティングの実績も豊富で様々な知識と技術力を有す。