
愛車をきれいに保つために欠かせない洗車ですが、方法を誤るとシミやムラ、ボディのギラつきが発生しやすくなります。特に炎天下での洗車にはリスクが多く、事前に理解しておくべきポイントがあります。
「炎天下の洗車は避けたほうがいい」と聞いたことがあっても、具体的に何が問題なのか、どんな点に気をつければいいのかわからない方もいるでしょう。
この記事では、炎天下での洗車を避けるべき理由や、やむを得ず作業する際のポイントを解説します。具体的な洗車手順も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
【結論】炎天下での洗車は基本的にNG
結論として、炎天下での洗車は避けるべきです。特に夏場はボディの温度が急上昇し、誤った方法で洗車するとシミやムラ、ギラつきの原因になります。
また、大型車の場合は作業時間が1時間近くなることもあり、炎天下での洗車は熱中症のリスクも高まります。さらに、強い日差しの下では体力の消耗が激しく、集中力も低下しやすくなります。途中で疲れて手を抜いてしまうと、汚れが十分に落とせなかったり、仕上がりにムラができることもあるでしょう。
絶対に洗車してはいけないわけではありませんが、できるだけ直射日光の強い時間帯を避けることが重要です。涼しい時間帯を選び、車や体への負担を軽減しながら作業するようにしましょう。
炎天下での洗車を避けた方がいい理由
直射日光が強い中での洗車は避けるべきだと前述しましたが、それにはいくつかの理由があります。理由を理解しておくことで、適切な対策を講じやすくなります。
ここでは、日差しの厳しい環境で洗車をなぜ避けるべきなのか、3つの理由について解説します。
ボディの温度が高くなりやすくシミが発生しやすい
炎天下での洗車は、ボディにシミができやすいため注意が必要です。特に「イオンデポジット」と呼ばれる水滴の跡が残りやすく、一度できると簡単には落とせません。
これは、炎天下ではボディの温度が極端に上昇しやすいためです。炎天下に駐車した車に乗ろうとしたとき、車内の暑さに驚いた経験がある方もいるでしょう。実際、ボディの表面はそれ以上に熱くなり、特に黒などの濃色車は日光を吸収しやすく、手で触れると火傷するほどの温度になることもあります。
この状態で洗車すると、水をかけてもすぐに蒸発してしまいます。シャンプーを洗い流した後に細かい水滴が乾くと、ミネラル分がボディに残り、白っぽいシミとなる原因になります。炎天下での洗車は、このようなトラブルにつながるため十分に注意が必要です。
関連記事:イオンデポジットとウォータースポットの原因と5つの対策を解説
シャンプーやクリーナーによるムラができやすい
洗車後のボディ拭き上げ時に水分が乾いてイオンデポジットなどのシミができやすいことについては前述しましたが、シャンプーやクリーナーを使用する際にも注意が必要です。
熱で水分が急速に乾燥してしまうと、シャンプーやクリーナーに含まれる成分がボディに固着し、ムラのような跡が残ることがあります。乾燥のスピードは思っている以上に速く、特にボンネットやルーフ(天井)は他の部分よりも乾きやすいため、十分な注意が必要です。
洗車だけでなく、コーティングのDIY施工にも注意が必要で、一度被膜が固まってしまうと磨かなければ取れないケースも珍しくありません。
急いだことが原因でミスやトラブルが起きやすい
炎天下での洗車は暑さが厳しく、できるだけ早く終わらせようと急いでしまいがちです。また、ここまで解説してきたリスクを理解しているからこそ、短時間で洗車を終えようと焦る人もいるでしょう。しかし、急ぐことで思わぬミスやトラブルが発生することがあります。
たとえば、脚立をボディにぶつけてしまったり、洗い残しが出たり、脚立から滑って転落する危険もあります。さらに、水やシャンプーが地面に広がることで足元が滑りやすくなり、不注意による転倒のリスクも高まります。加えて、炎天下での作業は体力を奪われやすく、熱中症の危険もあるため注意が必要です。
炎天下の洗車で意識すべきポイント
ここまで炎天下での洗車リスクについて解説してきましたが、屋根のあるスペースがなく、直射日光の下で洗車しなければならないこともあります。日程の都合で避けられない場合もあるでしょう。
そのような時は、いくつかのポイントを意識することで、失敗やトラブルを防ぎやすくなります。ここでは、作業中に何を意識すればいいのか具体的に解説します。
早朝や夕方など涼しい時間帯を選ぶ
まずは、洗車する時間帯を工夫しましょう。早朝や夕方であれば、昼頃に比べて太陽光が弱く、ボディが熱くなりにくいためおすすめです。また、気温が低めの時間帯を選ぶことで、体への負担も軽減できます。
さらに、湿度が比較的高い時間帯は水分の蒸発が緩やかになるため、シャンプーやクリーナーがムラになりにくくなります。風が穏やかな時間帯を狙えば、洗車中の水分がすぐに飛ばされるのを防ぎ、作業しやすくもなります。
ただし、早すぎたり遅すぎると周りの迷惑になったり、暗すぎて足元が見えにくく作業ミスに繋がったりする恐れがあるため、注意しましょう。
足回りとボディは分けて洗う
太陽光の熱によるボディの乾燥を防ぐには、作業の進め方にも工夫が必要です。特に時間がかかりやすい足回りは、先に終わらせてからボディを洗うようにしましょう。
ボディサイズが大きく、それでも乾いてしまいやすい場合は、ボンネットとルーフを洗った後に一度水をかけてしっかり冷やします。その後、側面を洗うといった流れにすると、ボディが乾きにくくなります。
また、足回りは泥やブレーキダストが多く付着しており、ボディと同時に洗うと砂や鉄粉が付着しやすくなります。順番を分けることで、汚れをボディに広げるリスクも抑えられます。炎天下では作業中に水が乾きやすいため、洗う部分ごとに水をかけ直しながら進めると、より安心です。
ボディが冷えるまでしっかりと水をかけ続ける
洗車を始める際は、軽く水をかけるだけでなく、ボディがしっかり冷えるまで水をかけ続けることが重要です。これにより、乾燥のしやすさが大きく変わり、シミやムラの発生を防ぎやすくなります。
また、水をかける際は上から下の順に行うのが基本です。そうすることで、汚れが効率よく流れ落ち、スポンジで擦る際に汚れを引きずりにくくなります。これにより、細かい線傷が入りにくくなり、仕上がりがきれいになります。特に黒や濃色の車は、手で触って温度を確認しながら十分に冷やすことを意識しましょう。
炎天下ではボディがすぐに温まるため、作業途中でも必要に応じてこまめに水をかけ直しながら進めるのがおすすめです。
炎天下の洗車方法
洗車したことがあまりなく、具体的な作業の流れがイメージしにくいと感じる方もいるのではないでしょうか。特に炎天下での洗車は、通常とは異なる注意点が多いため、適切な手順を理解しておくことが大切です。
ここでは、炎天下での洗車を想定し、作業手順と意識すべきポイントについて解説します。
足回りから洗車を始める
まずは足回りから洗車を始めていきます。どうせ洗うからとボディにも水をかける人もいますが、最初はホイール周辺のみにかけるようにしましょう。
作業の流れとしては、まず強めの水を当てて表面の汚れをしっかり流し落とします。十分に冷えたら、シャンプーをかけて専用のスポンジで洗っていきましょう。足回りは鉄粉や油汚れ、砂ぼこりが多いため、ボディ用とは別のスポンジを必ず用意することが大切です。同じスポンジを使うと、細かい砂粒や鉄粉でボディに傷をつける原因になります。
また、1本ずつ丁寧に洗うことも重要です。4本すべてにシャンプーをつけてしまうと、炎天下では洗っている間に乾いてしまい、汚れが残りやすくなります。汚れがひどく、シャンプーだけでは落ちない場合は、ホイール専用のクリーナーを使うと効果的です。
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ボディー全体に水を大量にかけて十分に冷やす
足回りの洗車が終わったら、ボディ全体に水をかけてしっかり冷やしていきます。上から下の順に強めの水を当て、表面の汚れを流し落としましょう。ある程度水をかけた後は、手で触れて十分に冷えているか確認することが大切です。
ボディが熱いままだと、水分がすぐに蒸発しやすく、シャンプーやクリーナーがムラになりやすくなります。特に日光が当たりやすいボンネットやルーフは冷えにくいため、重点的に水をかけると効果的です。
また、ワイパーを立てておくことで、フロントガラスやワイパー周辺の汚れが流れやすくなります。水をかけた後はすぐにシャンプー作業に移れるよう、あらかじめ洗車道具を準備しておくとスムーズに作業が進みます。
素早く上から下の順でシャンプーする
ボディをしっかり冷やした後は、上から下の順で手早くシャンプーしていきます。サイズが大きい場合は、ルーフ(天井部分)とボンネットを洗い終えた時点で、再度ボディ全体に水をかけて冷やしましょう。これにより、作業中にボディが熱くなりすぎるのを防ぎ、シャンプーが乾くのを抑えられます。
その後、側面部分を洗っていきます。洗う順番に厳密なルールはありませんが、下回りは泥や砂などの汚れが多いため、最後に洗うのが基本です。先に洗ってしまうとスポンジに汚れが付着しやすく、ボディに傷をつけるリスクが高まります。
また、炎天下ではシャンプーが乾くスピードが速いため、一度に広範囲を洗おうとせず、パーツごとに洗いながら進めるのが理想的です。洗い終えた部分はすぐに水をかけて泡を流し、乾燥によるシミやムラを防ぎましょう。
ボディ全体をしっかり洗い流す
ボディを洗い終えたら、大量の水を使ってシャンプーをしっかり洗い流しましょう。このときも、上から下の順で流していくのが基本です。
細かい隙間にシャンプーが残っていると、時間が経ってから水と一緒に垂れ出し、跡が残る原因になります。特にドアミラーの付け根、バイザー周辺、エンブレムの隙間などはシャンプーが溜まりやすいため、念入りにすすぐことが大切です。
さらに、ルーフやボンネットの端の部分も泡が残りやすいため、角度を変えて水をかけると洗い残しを防げます。流し終えたら、ボディ全体をチェックし、泡が残っていないか確認してから次の工程に進みましょう。
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ルーフやボンネットから水分を素早く拭き取る
シャンプーを完全に洗い流した後は、マイクロファイバークロスを使ってボディの水分を素早く拭き取ります。特にボンネットやルーフは直射日光が当たりやすく、すぐに乾いてシミができやすいため、最初に拭き取るのがポイントです。このときも、下回りは最後にします。
また、大判のマイクロファイバータオルがあると、一度に広範囲の水分を拭き取れるため作業効率が上がります。ただし、サイズが大きいぶん扱いづらく、地面に触れて汚れてしまわないよう注意が必要です。
必須ではないものの、エアブローがあるとドアミラーの付け根やエンブレムの隙間など、細かい部分の水を飛ばすのに便利です。
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関連記事:車の洗車方法をプロが徹底解説8ステップで誰でもプロ洗車できる
炎天下での洗車機の使用にも注意が必要
ガソリンスタンドなどに設置されている自動洗車機は、短時間で洗車できる利便性が特徴です。機械が自動で作業するため、炎天下でも問題ないように思うかもしれませんが、実際には注意すべき点がいくつかあります。
自動洗車機はボディを洗った後、強風で水気を飛ばしますが、それでも多くの水分がボディに残った状態になります。このまま放置すると、炎天下ではすぐに水滴が乾いてしまい、シミができやすくなります。そのため、洗車機を使用した後も、必ず拭き上げを行いましょう。特にルーフやボンネットは熱を持ちやすいため、最初に拭き取るのがポイントです。
また、自動洗車機は使用する水の量が一定であるため、ボディが十分に冷えないまま洗車されます。その結果、水分が急速に乾いてしまい、ムラやシミができる原因になります。炎天下で自動洗車機を利用する際は、洗車後の拭き上げを徹底し、できるだけ日陰で作業するようにしましょう。
炎天下の洗車に関するよくある質問
最後は炎天下の洗車に関する、4つのよくある質問に答えていきます。季節別の洗車や炎天下でのワックスがけなど、普段のお手入れに役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
冬の場合は炎天下で洗車しても大丈夫?
冬は気温が低いため、炎天下でもボディが熱くなりにくく、夏ほど乾燥の影響を気にする必要はありません。ボディを触って熱くなければ、通常通り洗車して問題ありません。ただし、地域によっては別の注意点があります。
氷点下を下回るような場所では、気温の低い早朝や夕方は避け、できるだけ暖かい時間帯に洗車するのがおすすめです。気温が低いと、洗車で使った水が隙間で凍ってしまい、ドアやトランクが開かなくなることがあります。ミラーが凍りついたり、ワイパーゴムがガラスに張り付いたりすることもあるため、冬場は洗車後の水分拭き取りを徹底することが大切です。
炎天下でワックスがけしても大丈夫?
基本的に、洗車に限らず車のお手入れは炎天下での作業を避けるのが理想です。水を使うとシミができやすくなり、コーティング剤は成分が急激に固まってしまいムラになりやすくなるため、仕上がりに悪影響を及ぼす可能性があります。ワックスに関しては、油脂成分でできているため、被膜が固まることはなく、炎天下でも作業自体は可能です。
ただし、ボディが非常に熱くなっている場合は、塗り広げる際に溶けやすくなり、均一に仕上げるのが難しくなることがあります。また、ボディに触れた際のやけどのリスクや、炎天下での長時間作業による熱中症の危険もあるため、できるだけ涼しい時間帯や日陰で作業することをおすすめします。
洗車するうえで最適な朝の時間帯は?
洗車をするなら、気温が低くボディが熱くなりにくい朝の時間帯が理想です。ただし、あまりにも早朝すぎると薄暗くて作業しづらく、周囲から不審に思われる可能性もあります。また、ドアを閉める音や水を流す音が騒音トラブルにつながることもあるため、日が完全に昇って明るくなってから始めるのがベストです。
最適な時間帯は季節によって異なります。夏場は6時〜8時ごろ、冬場は7時〜8時ごろが目安です。夏は気温が上がる前に作業を終えるのが理想であり、冬は氷点下を避けつつ明るくなった時間帯が適しています。この時間帯であれば、周囲への配慮もしやすく、快適に洗車ができるでしょう。
洗車してはいけない気温は?
洗車に適さない明確な気温の基準はないものの、気温が極端に高い場合や低い場合には注意が必要です。
夏場は、30度を超えるような猛暑日になると、炎天下かどうかに関係なく熱中症のリスクが高まります。特に直射日光の下では、体温が上昇しやすく、長時間の作業は危険を伴うため、無理をせず涼しい時間帯を選びましょう。
一方、冬場は氷点下を大きく下回ると、水がすぐに凍結するため注意が必要です。ドアの隙間や鍵穴に水が入り込むと凍りついてしまい、ドアが開かなくなることもあります。寒冷地では洗車後の拭き上げを徹底し、ゴム部分にはシリコンスプレーなどを使うと凍結防止に役立ちます。
炎天下で洗車する場合はシミなどに注意しよう
炎天下での洗車は、ボディが非常に熱くなり、水やシャンプーが乾燥しやすいため、シミやムラ、ギラつきが発生しやすくなります。さらに、長時間の作業は熱中症のリスクも伴うため、基本的には避けるのが無難です。
どうしても炎天下で洗車しなければならない場合は、ボディを十分に冷やしたうえで、工程を複数に分け、途中でこまめに水をかけながら乾燥を防ぐことが大切です。また、拭き上げはボンネットやルーフから優先して行い、できるだけ早めに仕上げるようにしましょう。
適切なタイミングで洗車を行い、愛車をきれいな状態で維持しましょう。

著者情報
株式会社カービューティーアイアイシー
代表取締役社長 舊役 哲史
2008年にガラスコーティング専門店の株式会社カービューテイーアイアイシーに入社
現在まで2,000台以上のカーコーティング,ガラスコーティングの施工実績を持ち、特に輸入車などの施工実績が豊富である。カーコーティングのオプション作業としてホイールコーティングの実績も豊富で様々な知識と技術力を有す。